始まりの戯言

その報道写真集は冷酷で、臓器を抉るような力があった。僕は僕の住んでいる現実しか知らなかったことをその夏に知った。
マザーテレサの名に何処か現実離れした距離感を抱きつつ、この掌にある現実を誰かが救うことを願った。ただ、待つ事を僕は知らなかった。幸か不幸か選択肢は無く、その誰かが自分である等と短絡的な発想しか持ち得ていなかった。
僕の目的地は漠然とした霧に包まれていながらもどこか形而上学的な本質を捉えているという過信があった。恥ずかしげもなく「世界を変える」等と謳えた。いつなんどきも、謳いながら全国をまわった。本気だった。だが、僕は歳をとった。経験が、目に映るようになっていった。現実は、想像以上に闇深く捩じれているものだった。その捩じれにそぐわないほどに僕は真っすぐだった。
僕は一度死んだ。