架空のこの前

二度寝とは縁のない朝に、ポンキッキーズをみて、ランドセルの重さなんて感じずに学校まで走って、
給食のメニューに一喜一憂して、嫌いなものが食べられずに掃除の時間も教室の隅ではまだ給食を食べさせられてるやつがいて、
掃除の時間は雑巾と共に膝を濡らして教室を滑り回り、誰がいちばん長い距離を滑れるのか競い合って、帰りの会では授業中に消しゴムのカスを投げてた事をバラされて先生に怒られて、ちくった女子に変なあだ名つけて放課後追いかけ回されて、女子の方が力強いから引っ張られた半袖Tシャツの首がびよんびよんに伸びて、気付けば校庭では女子も男子も関係の無いサッカーが始まっていて、球を追うことに飽きたやつは鉄棒の下にある蟻の巣を覗き込んだりしていて、日が暮れる頃にはランドセル並べて通学路を折り返して、白線しか歩いてはいけないルールを誰かが作れば落ちたやつはサメに食われて、朝みたアニメの話をしたり、自分のお父さんは力がものすごい強いんだという自慢話をし合ったりして、

明後日のことなんて考えたことがなかった

今日が終わる頃には明日の休み時間の夢をベッドのなかで見ていた
いつも行く公園のちょっと先にはどんな世界が広がっているか胸が高鳴ってしかたなかった、
ほとんどが知らない場所だった 知っていることなんて殆どなかった
境界線とか、限界とか、自分には何ができて何ができないかなんてわからなかった
だから、なんでもできる気がした
夢とか、諦めるとか、それより先に、やりたいと思ったらやってた
笑いたければ笑って、「授業中だ」と怒られて、走りたければ走って、「廊下は走るな」と怒られて、
でも、そんなこと重要じゃなかった
「今」しか知らなかった だからこそ、自分が死んだ先のことを考えると怖くてどうしようも無い気持ちになった

いつからだ、住み分けがこの二つの目に見えるようになったのは
いつからだ、不条理がこの二つの目に映るようになったのは

最も恐ろしい事は、そんな自らの道標を、忘れたことすら忘れてしまっている今日に今自分が立っているということだ
今なお自分のてのひらをじっと見つめてみればわかるだろう、その今日立っている自分は、紛れも無くあの頃の自分と同じ自分である事を

歳が降り積もろうと、経験を残そうと、手の形は変わらない
あらゆることは変わっていくのではなく、忘れていくのだ

あの頃に戻りたい それはなんて盲目的な。
戻るも何も、今も昔もずっとあんただ 今もあんただ 鼻水たれてたあんたも 同じだ
今の自分が、あの頃のあんただ

大人になり、電車も乗れるし海外だってひとりで行けるようになったけど、あの頃の教室はもっと広かった

2012-02-24 05:31:40