水と夜

ボクサーだと名乗っていた男が
人を殴ることが怖くなった

神父として生きてきた男が
祈りを信じることができなくなった

レーサーとして胸を張ってきた男が
アクセルのかけ方を忘れてしまった

保育士として生計をたててきた女が
子どもに何を教えようとも世界は塞ぎ込んでいることを知ってしまった

デザイナーとして知る人ぞ知る人が
裸の重要性に気がつき服を着ることをやめてしまった
 
詩人として息を吸って吐いてきた男が
言葉の行方を見失った

そしてそれらは真に生涯の落日を思う。