人生はあっという間だから

人生はいつの日もあっという間だ
67歳になった今日もそう思う
中学を出てから50年も経ったなんて信じられない
やはり、あっという間だ
そう思うと、いつの日もそうだった
中学の卒業式、帰りには、つい最近までランドセルを背負っていたものだと思った記憶がある
自分、あるいはあなたが生まれたあの日から線が引かれ
そしてそれは今日まで続いた一本の人生と呼ばれる線になっている
そういう意味では、今、や、自分、思い、感覚といったものは、
この今という点、今日という点にしか存在しない
今の自分以外はあっという間のものである
それは言葉を覚えたての3歳児にあっても、
酒浸りから女遊びまで浸かり切った定年上がりの爺いにも同質である
昨日も一昨日も、先月も、1年前も、点を終える瞬間に遠い人生の線となるのだ
これを書くわたし
これを読むあなた
今、ここは点だ
それはとても自由だ
まだ前にはなんの線も引かれていない
真っ白で人智の向こう側にある美しき無限
誰の足跡もついていない白銀の世界に前のめりになることも
助走をつけて跳ぶことも
そっと歩くこともできる
今、この一点においてのみ肌身離れない確かさで出来事と可能性は繋がっている
今、これを書くわたしは次の瞬間に窓を開け放って飛び降りることも
長年勤めてきた職場の天下り先に辞表を送りつけることも
ただ心地の良い夜風を深く吸い込むこともできる
これを書くわたし
これを読むあなた
今、ここは点だ
それはとても自由だ
まだ前にはなんの線も引かれていない

(鼻垂れ小学生だろうと三十路女だろうと、耄碌じじいだろうと)