ジェットコースターに乗れない僕がバンジージャンプをした話

ジェットコースターが苦手だ。キャラクターに似合わないから面白いとのことで、遠足の時には両手両足を担がれてスプラッシュマウンテンに乗せられたぐらい苦手だ。みんな大好きディズニーランドの、「カリブの海賊」にて2m前後落下する速度ですら気を失いそうになる。
そんな僕が数年前、自分にとっての最たる恐怖とは何かを考えた。ビッグサンダーマウンテン、富士急ハイランド、台風時の飛行機、広域指定暴力団、色々考えた。その結果、我が命、生きていくうえで最も恐ろしいものは、死を除けば「バンジージャンプ」ではないかということになった。
デパートの9階から2階に下るエレベーターの勢いですら顔がひきつる自分がそんな目にあったら…。気付くと僕は山に向かっていた。

自分の中の最大の恐怖を知らずして、いい詩が書けるはずがない。今考えればデメリットしかないそんな思いに駆られ、鏡の前の自分に「逃げるな」と何度も独り言を言い、そびえ立つジャンプ台を目指した。
どうやら単独で来たのは僕だけだった。よほど絶叫系が好きな人間でも、関東の奥深くまで一人で出向き崖から落ちようとは思わないようで、多くは若者のグループだったりで盛り上がっていた。順番待ちをしていると、さっきまで宴の帝王のように小躍りをしていた若者たちが続々と顔を青くして下りてくる。どういうことかと高台を見上げてみると、あとは飛び降りるだけ、という状況でリタイアする人の多いこと。グループで来ている面々は地上から「いけー!」「タクヤー!」などと叫んでいるが、高台に立たされた当事者はそんな奴ら知り合いですらないです面をして僕の横をすり抜け引き返していく。
僕は、より自分を恐怖の高みへ連れて行く為に自己暗示をかけた。「実は今は中世で、自分は大罪を犯し、処刑されることになった。その刑は高台から突き落とされて死ぬという刑で、今日が処刑日。今、その階段を上っているところ」と脳内で唱え続けた。
地球の全ての建物、生き物、木々が自分のつま先より下にある光景をその時初めて見た。地球はほんとに丸かった。あまりの恐怖に思考がきりきり舞いになっていたのは間違いないが、とにかく地球、本当に丸い。そして次の瞬間、この地球に向かって倒れ込む。
 
そこから一週間前後の記憶は朧げで、恐怖のあまりどうやって帰ったかさえ思い出せず。
これまでも河川敷のホームレス区域に突入し寝食を共にしたり、ピザを切るカッターで手のひらをゆっくり切ってみたり、蟻を100匹食べてみたり、制限無く自分の好奇心や未知に触れ回ってきた。その度に書かざるを得なくなった衝動を文字として吐き、詩という形にしてきたのだが、最大の挑戦はただただ記憶を奪うという結果に終わり、バンジージャンプ、おすすめしません。