まぼろし

「来年またあるから」
そう言われて腑に落ちたことは此処十年無い
かの日、もとより白い顔に白化粧が施されるのを見た
針は止まった
一年後、どうして生きていると思える
浮世の死生情勢は複雑怪奇
アリストテレスでもなだいなだでも何者でも
如何なる説得をもってしても結句徒爾に終わる
かの日、針は止まった
眠る時には目の覚めることの無い数時間後の未来に震え
肉親と別れる際にはこれが最後と気落ちする
24時間後の世界に生きている世界を想像できなくなってしまったこの身体
「来年またあるから」
またそう思えるようになるか
深い森に沈みゆく臓物と陰