作成者別アーカイブ: Kurokawaryu

欲ニモ負ケズ

流れ星より流れ星を見上げる横顔が綺麗なことを知っている男
注ぐ熱燗よりも沸き立つ思いの方が熱いことを知っている女
飼い主よりも近所の金物屋の店主の方が餌をくれることを知っている犬
その報酬よりも殺し自体が目的になっている殺し屋
愛情よりも契約の価値が上回ってしまった彼女
生き方よりもスキルばかりがついてしまったダンディズム
抱くことではなく摩擦が目的地になった流線形
見渡せば都市は危険だらけ
だが命を飛ばすほどではない
だから人は死ななきゃわからない
ほら吹き扱いだった飛行機はライト兄弟が実現し
絵空事だったロケットは人類を宇宙へ誘い
SFだった携帯電話は日常に代わり
あらゆることを手にできた人間なのに
どうしてか寿命だけは知らずに生きていく
だから人は死ななきゃわからない
流れ星より流れ星を見上げる横顔より、流れ星を見ようと言ったことの美しさを知っている男
注ぐ熱燗よりも沸き立つ思いよりも、酔うことの覚悟を決めたことの愛しさを知っている女
そういうものに、わたしはなりたい

二度見

借り物の白いTシャツに袖を通す
青白い夜光はカーテンを透かし
浮き上がる血管を柔く照らす
日に焼けた腕が歳を語る年輪のようだ
何も変わっちゃいない
好きな食べ物はカレーに焼肉
語ることはなくなったが夢だってある
叶っていないからとも言えるが。
それなのにどうしたことかその皺は
立派に歳を刻んだ風態の腕がおれの身体から伸びている
他人を見るような目で見るなと掌はピクリ
おれは大人になってしまったのか
鏡を見に行こうも勇気が出ない
ピアニカを捨てたあの日からわかったことなんて1つしかない
オンナには気を付けろ、でもオンナには優しく
そんなことを知るために教室を飛び出したわけじゃなかった
何かを思い出したかのように着たばかりのTシャツを鞘に戻し
季節外れのニットを脇にこさえてソッと夜道に躍り出る
夜が明けるまでが遠足で
そこから先は露の旅

告白

罪を晴らすかのように夜を弄り
見開いた眼には湖がゆらゆらと灯る
視力を失して永くなるが
かねてより見える闇の輪舞
愛は胸に心臓に
心臓は明くる日に
その鼓動は抱擁の隙間に
その音は声にならない叫びに
そのリズムが止まる刹那は叫びに
叫びは木霊する愛に
誰も救わぬ愛は
若さに
永遠を眺める横断歩道に添える頬に
きみを愛してる
そう今だから言えるとブランコから離れる時に

窓を挟んで愛の歌

何度も何度も名前を呼ぶ声が聞こえるので
振り返ってみたら誰もいなかった
いや、正確にはいなくなっていた
蜂蜜と彼女
耳心地だけが残る街はざらざらと風だけが抜けていく
聞こえているのに聞こえないふりをして
名前はわたしから離れて大気圏に
空気がなくなる頃に意識はわたしからあなたへと
音のない闇の中腹からは真っ青な顔をした地球が見える
漏れた耽溺は引力に滴りまた雲を抜け頬に落ちていく
覚えのある触感が反響に鳴く
まるでアニメのような、深刻なポップ
煌めく閃光は脳天撃ち抜く恋でした
それでも崩れ落ちないお城がなかったように
砂場よろしく、振り返ればそこに波の跡だけ
美しいことは変わらない
変わるのはいつもわたしの方で
古びたウォークマンさながら聞こえないのです
美しいものが声を持ったならば

詩人

詩なんて書けるかよ
そんな情感に言葉たちが吹き飛ばされていく
ねじふせられ
なじられ
ぎしぎしと缶詰に詰められた鳥たちのように
小さな割れ目から濡れた一羽一羽が零れていく
薄暗い空に、汚れた七色の虹が架かる
そんな労苦を小銭に代え飯を買う家路
ため息は白い
一台のベンツ
降りきた男のため息も白い
人間という同種の動物が外装だけ僅かに変え、違ったように生きる
おれもそちら側に行ったら、落ち着いて詩を書くことができるのか
止めた歩みを再開し、読む宛てもない文字を打ち込んでいく

寝落ち

更生いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいえええええええええええええええおっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっj                                                                                                                                                       

YUEN

点とは
悔恨ではなく時針の逆回転を渇望するようなこと
線とは
魯鈍で淡い水色の変化のこと
棒状のアウトバーンを逆走せよ
その滑空路の注ぎ口に接吻せよ
そうとは誰も私も言わなかったし思いもしなかった
曖昧なタイムラインにおいてさえ屹立するもの
2年前の今日好きな人がいました
それが点と線の違いです

風と時

空いた胸が塞がらない
どうしたって
そうしたって
夜の長さが測れるようになったあたりから
それは日夜拡がっていたのだろう
すきま風はいつしか大きなうねりとなって
わたしを襲ったのだろう
夜より朝を長くしたら、風は止むのだろうか
わたしがわたしを嫌いになるのをやめたとき
空いた胸が塞がるだろう